不妊症について 不妊症について

不妊症の治療方法は?

監修:東邦大学医学部産科婦人科学講座 教授
 片桐 由起子 先生

不妊治療の3つのステップ

不妊治療は「赤ちゃんを授かる」ことが目標です。一般的に3段階のステップで行いますので、たとえひとつの方法で妊娠にいたらなくても別の方法を試すことができます。
ただし不妊の原因によっては、2段階目あるいは3段階目から始める場合もあります。ここでは、主な不妊治療の3段階のステップを紹介します。

不妊治療のステップアップ

タイミング療法

  • タイミング療法は、不妊治療の基本です。
  • 排卵誘発剤を使用することがあります。

人工授精

  • 精子の数が少ない場合、精子の動きがよくない場合、勃起不全(ED)などの場合に行います。
  • 頸管粘液不全などの場合に行います。
  • 排卵誘発剤を使用することがあります。

生殖補助医療

  • STEP1・2で妊娠が成立しなかった場合に行います。
  • STEP1・2では妊娠成立が難しいことが予想される場合に行います。(体外受精・胚移植)
(体外受精・胚移植)
  • 卵管にトラブルがある時や、他の方法で妊娠が成立しない場合に行います。
(顕微授精・胚移植)
  • 精子の数が極端に少ない場合、精子の動きが良くない場合に行います。
  • 体外受精・胚移植で受精がうまく行かない場合に行います。

タイミング療法

排卵日を予測して性交を行う時期を指導するタイミング療法は、不妊治療の基本です。排卵誘発剤を併用することもあります。

排卵日を予測する方法
基礎体温表をつける
2ヶ月ほど基礎体温を記録して、おおよその排卵日を予測します。低温から高温への移行期頃が排卵日です。
超音波検査で卵胞を確認する
卵胞の大きさが18mm以上になると排卵が近いといわれています。
LHサージの確認
血液検査もしくは尿検査でLH(黄体形成ホルモン)を測定し、サージ(急激な増加)が起きているかを確認します。サージ開始34~36時間後に排卵がおきるといわれています。

人工授精

採取した精液中の運動良好精子を人工的に子宮の中に注入する方法で、精子注入後のプロセスは自然妊娠と同じです。タイミング療法と同様に、排卵日を予測し、元気な精子の濃縮液を細い管で子宮内に注入します。

人工授精の方法
排卵日の予測
精液の採取
排卵日に合わせて、精液を採取します。
精子の選択
子宮内への感染を予防するため精液を洗浄し、余分な細胞等を取り除き元気な精子を集めます。
子宮内に精子を注入
細い管を用いて、濃縮された運動良好な精子懸濁液を子宮内に注入します。

生殖補助医療(Assisted Reproductive Technology: ART)

(体外受精・胚移植)
卵管にトラブルがある時や、他の方法では妊娠の可能性がないか極めて低いと判断される場合に行います。
(顕微授精・胚移植)
精子の状態がきわめて悪い場合や、体外受精で卵子に受精現象が起こらない場合等に行います。
(受精卵(胚)の凍結保存)
受精卵(胚)が複数できた場合や治療周期に受精卵(胚)を移植すると女性の健康に危険が及ぶと判断された場合、別の周期に移植する方が妊娠の確率が高いと判断される場合などに受精卵(胚)の凍結保存が行われます。
食品を冷蔵庫で保存する場合と異なり、-196℃という超低温の液体窒素に浸して凍結保存するため、長年状態を変化させないままで保存することができます。

体外受精と顕微授精

排卵誘発剤の使用

複数の卵胞を育てます。

採卵と採精

排卵時期に合わせて、超音波で見ながら卵胞を穿刺して卵子を採取します。同時に精子を採取します。

体外受精

採取した卵子と精子を受精させます。

卵子と精子を一緒に培養液の中に入れて受精。

顕微授精

顕微鏡で見ながら精子を卵子の中に注入。

黄体期管理

胚移植に先立って子宮内膜を着床しやすく整えます。胚が着床した後は、胎盤が十分機能する時期まで妊娠を維持するためホルモン剤の投与を行います。

培養

培養液の中で、受精卵(胚)を2〜5日育てます。

胚凍結

胚移植

育った胚を子宮内へ戻します。着床しやすい状態をつくるため、黄体ホルモンを補充します 。

妊娠成立

関連情報