月経困難症について 月経困難症ってどんな病気?

月経困難症ってどんな病気?

監修:千葉大学大学院医学研究院
生殖医学講座 教授
 甲賀 かをり 先生

月経困難症ってどんな病気?

月経期間中に月経にともなっておこる病的な状態をいい、下腹部痛、腰痛など一般に月経痛とよばれる症状に加え、おなかの張る感じ、吐き気、頭痛、疲労・脱力感、食欲不振、いらいら、下痢および憂うつなども含まれます。 なお、排卵を伴わない月経のときには月経痛は起こりづらい、と言われています。

機能性月経困難症(原因疾患がない)

初経後1〜2年から始まることが多いといわれます。
原因疾患がないことから「原発性月経困難症」ともいわれます。
月経困難症を訴える人の4割以上を占めます。

器質性月経困難症(原因疾患がある)

原因疾患があるために起こる月経困難症を「器質性月経困難症」といいます。または原因疾患に続いて起こる事から「続発性月経困難症」ともいわれます。初経後5年以上経過してから発症することが多いといわれます。
原因となる疾患は下記の通りで、これらの疾患を複数合併しているケースも珍しくありません。

  • ① 子宮内膜症誤解されがちですが、これは子宮でおこる病気ではなく、子宮の外でおこる病気です。
    子宮内膜症とは、骨盤内や卵巣など子宮以外の場所で子宮内膜のような組織が増殖する病気です。増殖した組織は子宮内膜と同じように、月経がくると崩れて出血を起こします。本来の子宮内膜は出血とともに腟を通ってカラダの外へ出されますが、子宮以外の場所で増殖してしまった組織には出口がないため、お腹の中にたまって炎症を起こし、激しい痛みなどの症状を引き起こします。子宮内膜症の患者の8割以上の方に月経困難症が認められるといわれています。

  • ② 子宮腺筋症昔は子宮内膜症のひとつと思われていましたが、今では別の病気とされています。
    子宮腺筋症とは、子宮内膜が子宮の筋肉の層にもぐりこみ増殖する病気です。
    その組織が増殖を繰り返すとまわりの筋肉がかたくなり、子宮の壁もどんどん厚くなって、やがて子宮全体が大きくふくらんでいきます。
    症状としては、激しい痛みにくわえ、出血量も増えることから貧血になることもあります。

  • ③ 子宮筋腫子宮筋腫とは、子宮の壁を形づくっている筋肉の一部が異常に増殖し、こぶ(良性の腫瘍)ができる病気です。はっきりとした原因はまだ分かっていませんが、子宮の筋肉の中にできた腫瘍の芽が、女性ホルモンのひとつであるエストロゲンの刺激を受け、長い時間をかけて成長すると考えられています。
    腫瘍が大きくなるにつれ、出血時にレバーのような血のかたまりが混じって出てくるのが特徴です。

原因は?

  • ① プロスタグランジンの過剰分泌 子宮の内側ではがれ落ちた子宮内膜をカラダの外に出すために子宮を収縮させるプロスタグランジン(出産のとき、陣痛をおこす作用もあります)という物質が出てきます。これが過剰に分泌された結果、子宮が収縮しすぎて子宮の血流が悪くなり、結果、痛みが起こる、とされています。

  • ② 子宮口が狭い 若い方や出産経験のない方は子宮と腟をつなぐ部分が狭くてかたいためスムースに月経血を送り出せずに痛みが起こります。また子宮口が狭いことから月経血が逆流して卵管を通って骨盤内に流れ込み、月経血に含まれるプロスタグランジンによって痛みが出る事も考えられます。

  • ③ 心理的要因 「月経は痛い」「月経は嫌」「月経はうっとうしい」などの思い込みから起こることもあります。 また、ストレスが原因となることもあります。

  • ④ 運動不足や冷え 運動不足や冷房・薄着などにより血流を悪くすることも痛みを起こりやすくする、といわれています。

どれくらいの人がこの病気ですか?

過去に20-34歳の女性2万人を対象にwebアンケート調査を実施したところ、日頃悩まされている症状として「月経痛」を訴えた方は8,148人(40.7%)でした。総務省統計局が平成25年7月22日付で報告した人口統計によると、我が国の20〜34歳の女性の人口は1,046万人とのことですので、この比率を全国に当てはめると400万人強の20〜34歳の女性が月経痛に悩んでいるという事になります。

上記アンケート対象者の中で、月経痛が毎月もしくは2〜3か月に1回以上あり、それが悩みであると訴えた20〜34歳女性2,000人を対象に調査した結果、月経痛のために現在受診していると回答したのは、わずか14%で、過去に受診したが現在は受診していないという回答が26%でした。

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