妊娠前から授乳期までの食生活について
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授乳中に気をつけたいポイント
監修:産科婦人科舘出張佐藤病院
院長 佐藤 雄一先生
授乳中の食事は赤ちゃんが飲む母乳の量や質に影響を与えるため、栄養成分や摂取量を意識した食生活が不可欠です。また、母乳を通して赤ちゃんに及ぼす影響についても、気をつけた方がよい時期でもあります。
ポイント1: エネルギー量と栄養バランスに配慮し、十分な水分摂取を
授乳中は成人女性が1日にとるべきエネルギーよりも350kcalをプラスしてとることがすすめられています。例えばコンビニエンスストアで販売されているおにぎり1個のカロリーは200kcal前後ですから、350kcalをとるためには、さらにゆで卵2個を食べる必要があるのです。但し安易に高カロリーな食品や糖質の多い菓子類に頼るのはおすすめできません。加えて授乳期は慣れない育児に追われ自分自身の食事がおろそかになりがちです。エネルギー摂取を意識するとともにビタミンやミネラルの不足にも注意し、バランスのよい食事を心がけましょう。また、母乳のためには水分補給が欠かせません。一度に大量の水分をとるのではなく、喉の渇きを感じる前にこまめに水分をとったり、授乳や入浴前後、就寝前、起床時といったタイミングでの水分補給がおすすめです。
約350kcalの食品例:おにぎり1個+ゆで卵2個
ポイント2: 喫煙、飲酒は避けましょう
授乳中の喫煙、受動喫煙、飲酒は、赤ちゃんの発育、母乳の分泌に影響を与えます。禁煙、禁酒に努めましょう。周囲の人に協力をお願いすることも必要です。
ポイント3: カフェインはひかえめに
カフェインのとりすぎは不眠症、頭痛、イライラ感、脱水症、緊張感を引き起こすため、授乳中の女性の摂取は2杯までとすることを推奨している国もあります。日本では授乳中のカフェイン摂取量についての基準値はありませんが、コーヒーであれば1日2杯程度なら問題ないでしょう。
ポイント4: 母乳栄養が難しい場合は柔軟な対応を
母乳は栄養価が高く免疫物質が豊富に含まれる理想的な栄養源ですが、十分な量の母乳がでない場合や生活環境に応じて、人工栄養を選択する方法もあります。近年では粉ミルクに加え調乳が不要な液体ミルクも販売されており、ライフスタイルや場面に合わせた利用が可能となっています。母子ともに健やかな生活を送るために柔軟な対応を検討してください。
<最後に>
妊娠前から妊娠中、授乳期までの食生活の重要性はおわかりいただけたことと思います。しかし多少の個人差があるものの、およそ20ヵ月にも及ぶこの期間をすごすうえで、毎日パーフェクトな食生活を続けるのは不可能です。赤ちゃんの成長とともに必要な栄養素の種類や量が変化しますが、あまり神経質になりすぎず、サプリメントや総菜、宅配食も上手に活用し自分にあった方法でバランスのよい食生活を心がけてください。周囲の理解や協力はもちろん、不安があれば医療機関や地域の子育て支援センターに相談するなどしながら、お母さんも赤ちゃんも健やかにすごしましょう。
参考文献
・厚生労働省: 妊娠前からはじめる妊産婦のための食生活指針 ~妊娠前から、健康なからだづくりを~ 解説要領(令和3年3月)
・厚生労働省:国民健康・栄養調査結果の概要(令和元年)
・厚生労働省: 日本人の食事摂取基準(2020 年版)
・農林水産省: 食育に関する意識調査報告書(令和5年3月)
・厚生労働省: 「人口動態統計」、「健康日本21(第二次)」中間評価報告書
・「小さく産まれた赤ちゃんへの保健指導のあり方に関する調査」 研究会:低出生体重児 保健指導マニュアル(平成31年3月)