不妊症について 不妊症について

不妊症と原因

監修:東邦大学医学部産科婦人科学講座 教授
 片桐 由起子 先生

不妊症とは?

不妊症とは、カップルが赤ちゃんを望んでから一定期間(一般的には1年)たっても妊娠しない場合をいいます。女性も男性も加齢にともなって、妊娠するための機能が低下していきます。また、最も妊娠しやすい20歳代でも、1回の排卵で妊娠する確率は30%前後といわれています。不妊症はめずらしいことではなく、検査や治療を受けるカップルは増加しています。

赤ちゃんを望んでから1年たっても妊娠しない場合を「不妊症」といいます。

不妊症の種類

1. 原発性不妊
一度も妊娠したことがない場合。
2. 続発性不症
今までに妊娠を経験したが、そのあと不妊の場合。

WHO(世界保健機関)による調査では、不妊症の原因は男女ほぼ半々という結果が出ています。
「WHOによる7273カップルの不妊症の原因調査」より

不妊症は、決して女性だけの問題ではありません。

女性、男性、または男女共に不妊の原因が考えられるうえ、それぞれのカップルによって事情が異なります。

不妊症の原因は?(女性の場合)

妊娠までの過程のどこかに障害があると、不妊の原因となる場合があります。しかし、たとえトラブルがあっても、必ずしも妊娠に影響を与えるわけではありません。まずは医師に相談することをおすすめします。ここでは、女性不妊の主な原因を4つに分けて説明します。

排卵因子

排卵が不規則または無排卵、卵胞が育たない、などの排卵障害がおきると、妊娠は難しくなります。排卵がなくても月経はおこる場合があるので、各種検査によってまず、排卵障害かどうかを知ることが必要です。

  • 多のう胞性卵巣症候群
  • 高プロラクチン血症
  • 早発卵巣不全
  • 視床下部・下垂体機能不全

卵管因子

卵管がつまったり細くなったりしていると、精子や卵子、受精卵がうまく運ばれなくなります。

  • 子宮内膜症による卵管の癒着
  • クラミジア・淋菌などの感染

子宮因子

子宮のトラブルにより、受精卵が着床しにくくなったり、着床してもうまく育たなかったりする場合があります。

  • 子宮筋腫
  • 子宮内膜ポリープ
  • 子宮腺筋症
  • 双角子宮などの形態異常

その他の原因

その他の原因として、抗精子抗体などの免疫異常や、子宮頸管粘液分泌不全などによる精子通過障害の場合があります。また、遺伝学的変化なども考えられます。しかし妊娠のメカニズムは複雑なため、原因不明の不妊症が多いのも事実です。

  • 抗精子抗体
  • 子宮頸管粘液分泌不全

不妊症の原因は?(男性の場合)

男性不妊の原因は「精子がつくられない」「精子の数が少ない」「運動率が悪い」「精路(精液の通り道)の通過障害」などが挙げられます。
また、「性欲が低下している」「勃起しない」などのストレスや過労による性機能障害も原因の一つとして考えられます。まずは医師に相談し、精液検査などを受けてみましょう。

精子をうまくつくることができない

男性不妊の原因の8割は造精機能障害といわれています。他の原因を探る前に、まず、元気な精子が充分つくられているかどうかを把握することが必要です。流行性耳下腺炎(いわゆるおたふくかぜ)で高熱が出たり、幼少期に癌などの治療を受けたりしたことで、精子を作る力が弱まることがあります。
また、ノートパソコンを膝の上において作業するなど精巣を長時間高温にさらすような状態を避け、過度の喫煙や飲酒を控えることが大切です。

  • 先天的な造精機能障害
  • 非閉塞性無精子症
  • 精索静脈瘤

精子がうまく運ばれていかない

精子の通り道に何らかの障害があると、精子は運ばれなくなってしまいます。精巣で精子がうまくつくられ、治療などにより通り道の障害を取り除くことができれば、自然妊娠が期待できます。

  • 閉塞性無精子症
  • 幼少期鼠径ヘルニア手術

射精障害と勃起障害(ED)

射精障害の主な原因には、腟内射精障害、早漏・遅漏、逆行性射精、射精反射がない、等があり、腟内射精障害が最も多くみられます。EDとは、十分に勃起せず、満足に性交ができないことです。近年はストレスや過労などにより、EDになる人が増えています。
また、糖尿病にも注意が必要です。軽度の場合は射精障害やEDなどの原因となり、進行すると精子を作る力そのものが極端に低下します。
まずは男性が簡単に受けられる精液検査を受けてみるとよいでしょう。

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